この日は気温24℃のやや涼しい快晴の朝でした。一行は2泊したホテルのチェックアウトを済ませ、午前7時30分、福州市から北西へ約300キロの三明市明溪県に位置する「明渓南山遺跡」へと向かいました。福州市内の通勤ラッシュを過ぎ、高速道路に入るとマイクロバスは順調に進み始めました。福建の険しい山岳地帯に入ると、想像を絶する立派な長いトンネルと丘々を跨ぐ高架橋続きで、改めて中国のインフラ投資の実態に驚かされました。
途中、ガイド・林さんの家族や日本への割安旅行の実態等の話題に耳を傾けながら進み、五隼山服務区でトイレ休憩となりました。ここも結構立派なパーキングエリアで、珍しい山菜の土産物がたくさん店の棚に並んでいました。目的地の明溪県に近づいたところでマイクロバスは緊急事態の発生で途中下車し、何故か車内は爆笑でした。
正午過ぎ、一行は約4時間半を経て明溪県の街中に入り、何故か部屋中ピンクに包まれた999部屋での昼食タイムとなりました。気温は30℃を超える暑さで、ここでも水替わりのビールで喉を潤し、水餃子等の郷土料理を味わいました。
昼食を終えた一行は、明溪県城関郷の川淵に位置する「明渓南山遺跡」へと向かいました。ここは1986年に発見された新石器時代の墓葬遺跡で、1988年、2005年、2006年の3回に渡って3号洞、4号洞及び山頂区域の発掘が行われ、大量の石器、陶器や人骨類が出土し、中国社会科学院によって2017年の「中国考古新発見」の一つに選出され、注目されました。
現地では明渓県博物館館長の兪其宝先生が鍵を持って現れ、入口の鉄扉を開けて一行を洞窟へと案内してくれました。現在は未開放となっており、一行の訪問に合わせて、事前に解説板が設置されていました。注目される前は夏の恰好の避暑地としてダンスホールになっていたとのことで洞窟の床一帯にはコンクリート痕跡が残っていました。
1号洞、2号洞は規模が小さくて見学不能でしたが、3号洞、4号洞は奥深いところで繋がっており、如何にも神秘的な原始時代の洞窟で、現在も発掘中とのことでしたが、残念ながら何となく中途半端な印象でした。続いて案内された山頂にある宋代の平面六角のレンガ塔址地への登り坂は草木に覆われ、荒れ放題でした。兪館長に2018年1月に2017年の「中国考古新発見」に選ばれたのに、何故、遺跡の保存状態があまり良くないのかと質問すると、県や国の予算が付かないので発掘が終了したままの状態だが、別途、山頂の六角塔の再建計画はあるとのことでした。
続いて一行は明溪県城関郷の街中にある文化センターの一室に案内され、南山遺跡で発掘された土器、石器、陶片、水晶刮削器、骨器類、動物歯、米粒類など各種古代遺物や文物を見学しました。何故か清末1889年5月1日付の列強国資本家への反撃風刺壁画も額にして数点展示してありました。これも中国近代史の立派な文物です。
午後3時15分、一行は次に明渓県から高速道路を逆戻りし、三明市三元区岩前鎮に位置する「万寿岩遺跡」へと向かいました。1999年に発見された約2万年前の旧石器時代の古代人文化遺跡で、石灰岩にできた「船帆洞」「灵峰洞」と称される洞窟からは石核や石片、刮削器、骨類、哺乳動物の化石など多数が発掘されました。2001年4月に2000年の「中国十大考古新発見」、2017年12月には「第三次国家考古遺跡公園」に正式に選ばれ、2019年6月に福建省初の「国家考古遺跡公園−万寿岩国家考古遺跡公園」として正式開園しました。遺跡公園の計画面積は81.5ヘクタールで、洞窟遺跡、遺跡博物館、宋代五級の龍泉生態回復区、万寿岩山頂生態回復区などで構成されています。
一行が断崖絶壁上方の「灵峰洞」を眺めながら写真を撮っていると、三明市文物保護研究所主任の余生富先生が現れ、早速、絶壁左下にある「船帆洞」へと案内してくれました。洞窟の前方には葡萄畑が広がっており、一帯は昔、広大な寺院の敷地だったとのことでした。
「船帆洞」は何層にも年代が重なって奥域深く、多数の石器類や少量の骨角器類と動物化石類以外に、世界的にも珍しい約2万年前の人工の洪水防止用の土塁と湿気除けの石舗が地面に敷き詰められていました。絶壁の中腹にある大きな「灵峰洞」への階段は、落石の恐れがあるとのことで通行止めとなっており、残念ながら下から見上げるのみでした。
次に一行は遺跡公園内にある「万寿岩遺跡博物館」へと案内されました。約2万年前の万寿岩古人の生活状況や巨大哺乳類の復元コーナーとともに、発掘された石片、刮削器、骨類等の他に、「船帆洞」の内部断面図や年代別地層のレプリカなどが展示されていました。更には、2000年1月に当時の福建省長だった習近平国家主席が当地を視察した際のサイン入りの記念文書も誇らしげに飾ってありました。
一行は「万寿岩遺跡」を後に夕闇迫る三明市の中心街へと向かい、約1時間を経て午後7時、ホテル「天元国際酒店」にチェックインしました。地方都市のホテルとしては結構豪華な高層ホテルで、ここでもホテル内のレストランでの遅い夕食タイムとなりました。
この日は早朝からバス総走行距離500`超の長旅と野外炎天下での新・旧石器遺跡巡りで疲れ果て、早速、水代わりのビールで乾杯し、高速道路での緊急事態の話題で大笑いでした。李ジュンさんが一行の疲れを癒すために選んでくれた山菜スープや海鮮魚の煮つけ等を味わいましたが、同じ福建料理でも地方によって味付けが異なる等と、各自勝手な食レポでした。徐天進先生の説では、『食文化』はそれぞれの土地の歴史と生活風土を象徴しており、考古学にとっても重要な要素の一つとのことでした。(ご参考!)
3日目 「明渓南山遺跡」&「万寿岩遺跡」
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