19日午後、サキャ家への弔問を終えた一行は、一旦ホテルへと引き返し、ここで同氏とは2日間にわたる同行に感謝しつつ、お別れをしました。現地参加の女性陣とも昼食の後、お別れで、彼女達は今回の貴重な体験に感謝しつつ翌日、インドに向けて旅立つとのことでした。
午後2時過ぎ、我々は現地ツーリズムの案内で、今回の弔問の旅とは別に、密かに楽しみとしていたヒマラヤ連峰展望のため、ナガルコットの丘へと向かいました。ナガルコットはカトマンズの約32キロ北東に位置しており、標高2,175メートル。周りはヒマラヤの山々に囲まれており、朝日を見るのには最高のロケーションと言われています。
カトマンズ市内からから古都バクタブルに至る工事中の悪路を通り抜けると、辺りは昔懐かしい田園風景が広がっていました。ところどころに菜の花畑が見受けられ、ほっとした気分になりました。やがて道路は急な山道に差し掛かり、ヒマラヤ杉や松が生い茂る森林へ突き進んで行きました。狭い山道で屋根の上に人々を満載したミニバスと交差する時は、恐ろしくて思わす悲鳴を上げたくなりました。頂上に近づくと眼下には幾何学模様の棚田が幾重にも見え隠れし、まさに絶景ものでした。
約2時間かけて午後4時過ぎ、丘の最高峰に位置する「ホテル・ビューポイント」に到着しました。その名にふさわしい趣きのある木造のホテルでした。屋上展望台から眺める夕日は、午後6時過ぎには西の彼方、カトマンズ盆地に沈んでいきましたが、残念ながら夕日に映えるにマラヤ連邦の姿は春モヤに隠れて見えませんでした。それでも薄暮の中、目を凝らして眺めていると左の彼方にかすかに7,000メートル級のランタン・リルン峰の姿が見え始め、展望台にいた同宿の観光客達とともに感動の奇声をあげました。ブラボー!
午後7時過ぎ、ここでも停電でロウソクの灯りでの夕食となりました。幸いにも冷えたビールがあり、ネパール式のバイキング料理を肴に、聖地?カトマンズの喧騒した状況や政情不安による国民生活の厳しさなど、今回の旅の感想を遅くまで語り合いました。真っ暗闇の部屋の中では何もすることがなく、ベッドに横たわりながら夜空を見上げていると、そこには素晴らしい星空が広がっていました。早速、展望台に上ると、宝石を散りばめたように星屑が輝いており、カシオペア座、北斗七星など、久しぶりに天文学の世界を堪能することができました。深夜、トイレに立つと、星空は一段と輝きを増しており、辺りの山々を青白く浮かび上がらせ、神秘的な雰囲気を醸し出していました。
3月20日午前6時前、快晴。夜明け前に起床して、エベレスト方面から昇る日の出を見ようと展望台に登ると、既に多くの同宿者が陣取っていました。やがて、東の空が明るみ始め、午前6時15分頃、ヒマラヤ山系の一点から後光が差したかと思うと、みるみる内に真っ赤な太陽が現れ、眩しく輝き始めました。春モヤの上に浮かぶヒマラヤ連峰の姿も次第にくっきりと浮かび始めました。昨夕見えたランタン・リルンをはじめ、正面には6,000メートル級のガンチェンポ峰やドルチェ・ラクパ峰、はるか西の彼方には8,000メートル級のマナスル峰も見えました。東に位置する世界最高峰のエベレストは残念ながら逆行で見えませんでしたが、これぞ「聖地ヒマラヤの神々の目覚め」といった感動ものでした。
朝食後、当初約2時間半のミニトレッキングを予定していましたが、想像以上に山道が険しく、ガイドなしでは危険ということで断念。各自、自由な時間を過ごすことにしました。展望台から眺めるヒマラヤ連峰は刻一刻とその姿が変わり、雄大な自然の美しさに圧倒され、いつまでも見あきることはありませんでした。この後、筆者は一人、ホテル周辺の散策に出かけましたが、途中、山村の人々の素朴な暮らしや笑顔に触れることができ、身も心も洗われる別次元のひと時を過ごすことができました。
ヒマラヤ連峰展望・ナガルコット
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