この日も気温30度前後、薄曇り空の朝でした。午前8時半、一行はここでも連泊のため身軽な格好で杭州西湖文化広場にある超近代的な「環球中心」に隣接した新しい「浙江省博物館・武林館」に向かいました。同館は「浙江革命歴史記念館」でもあり、1階の文物展示以外に、2階、3階は革命歴史の教育宣伝やレジャーサービスが一体となった新たな博物館となっており、館内は「越地長歌」「銭江潮」「非凡的声」「意匠生輝」「十里紅粧」「青磁傑作」をテーマにした基本的な展示場があって、各時代の豊富な文物と独特な展示方法によって、浙江省の歴史を表現しています。
午前9時15分、孫先生と入口で待ち合わせた一行は、早速、館内に案内され、1階の「越地長歌」をテーマとした浙江歴史文化の陳列コーナーを、孫先生の解説で見学しました。そこには、良渚文化を代表する「玉j」、河姆渡文化を代表する「双鳥朝陽象牙蝶形器」をはじめ、戦国の「越王者旨於賜剣」、五代呉越の「鎏金銀阿育王塔」、北宋の「彩塑泥菩薩立像」、元の「龍泉窯青瓷舟硯滴」等々、浙江省各地で発掘された国宝級の貴重な文物が多数展示してありました。
午前10時半、新館の「浙江省博物館・武林館」の見学を終えた一行は、次に西湖孤山の南麓にある旧館の「浙江省博物館・孤山館」へと向かいました。西湖は言わずと知れた観光地で、湖畔には朝から多くの出店が立ち並び、大勢の観光客で賑わっていました。
浙江省博物館の旧館は1929年に設立され、河姆渡文化の陶器・漆器・木器・骨器象牙製品、良渚文化の玉器・シルク製品、越国の青銅器、越窯・龍泉窯・南宋官窯等の青磁、会稽古銅鏡と湖州古銅鏡、そして明・清時代の浙江省出身の書道家と画家の作品等、多数の文化遺産を多数展示してきましたが、新館の開館に伴い、現在は宋元明清の漆器芸術を陳列した「重貨綺芳」、中国古代の陶瓷を陳列した「昆山片玉」、著名な国画大師を紹介した「黄賓虹芸術館」を基本テーマにした展示場となっています。
一行が関係者専用入口から入って行くと、浙江省博物館の黎毓馨先生が笑顔で待ち構えておられ、一行を早速、旧館の“目玉”になっている「雷峯塔文物館」へと案内してくれました。雷峰塔は西湖の湖岸に立つ五層八角の塔で、五代十国時代の呉越国最後の国王の妃が男児を出産したのを祝って建立された塔です。西暦975年に呉越国の国王によって七階建て八角形の塔が建造されましたが、その後、雷で崩壊し、南宋時代に五階建ての楼閣式のものが再建されました。明の時代には屋根の部分が戦乱で壊れ、中のレンガ造りの部分だけが残りました。1924年にレンガ造りの部分も崩壊して遺跡だけが残りましたが、2002年に遺跡の跡に、南宋風の鉄筋コンクリートの雷峰塔が復元され、現在に至っています。「白蛇伝」という恋物語はここで発生したことでも有名です。
自由的百科全書「維基百科」によりますと、雷峰塔の原型は一基八角形、五層の煉瓦と木材構造の楼閣式塔です。塔檐、平座、回廊等は木材で構築され、塔内には八つの華厳経の石刻があり、塔の下には金剛羅漢十六尊が供えられていました。塔基檀の下に“地下宮殿”があるかどうかについては長年の論争がありましたが、発掘調査グループによるレーダー測定の結果、その存在が確認され、2001年3月に雷峰塔の地下宮殿が開かれました。地下宮殿口は750kgの重い石に覆われて、宮殿の中央には1個の鉄製の仏舎利函があり、鉄函の側面には1体の小さい銅製仏像、4面の青銅製鏡と大量の銅銭が出土しました。鉄製の仏舎利函を開けると、内から純度高い金塗銀塔が1基、四角形の青銅製鏡1個、青銅製鏡上に純度の高い黄金の箱が1つあり、完全な皮帯1幅と小さな藍のガラス瓶1つで結んであり、その中からは仏陀の巻髷髮を奉じた純度の高い黄金の金塗銀塔が発見されました。
黎先生は地下宮殿の発掘責任者でもあり、見事に修復された銀阿育王塔、銀鎏金阿育王塔をはじめ、金塗銅製や玉類の各種仏像や経典類、更には龍頭に座した大変珍しい金塗銅の釈迦牟尼佛説法像や平安時代の交易を示す銅銭等について1時間以上にわたって熱心に解説していただきました。一行は仏教遺跡の貴重な文物との出会いに大満足でした。
正午、旧館前で黎先生と記念撮影を終えた一行は杭州市内のホテル「五洋假日酒店」内にあるレストラン「好彩館」での昼食タイムとなりました。恒例の薄いビールで喉を潤おしながら、想定外の雷峰塔の “お宝”の話題で大いに盛り上がりました。
午後1時、早めに昼食を終えた一行は次に、孫先生の案内で呉山景区の小高い丘にある「杭州博物館」へと向かいました。博物館の前には「清河坊歴史文化街区」があり、元清河坊、鼓楼、呉山天風を中心に、胡慶余堂や胡雪岩故居、南宋御街、呉山文化広場、城隍閣等の歴史古跡と観光スポットとなっていて、大勢の観光客で賑わっていました。
杭州博物館は2001年10月に呉山の中腹に建てられた国家二級博物館で、本館と別館があり、一行は本館の「物貨天宝」をテーマにした杭州出土文物精品陳列のコーナーを見学しました。新石器時代から清に至る各種文物が展示してありますが、特に呉越国、南宋時代の多種多彩な陶磁器類が所狭し、と展示してありました。
今回のツアーのもう一つの目的、「南宋文化の粋」の代表格とも言える「龍泉窯青磁」をはじめ、南宋官窯、越州窯、上林湖越窯、吉州窯等の青磁器類を目の当たりにした一行は、南宋時代が如何に各種技術や独特な工芸品を発達させ、後世に多大な影響を与えたかを改めて理解することができました。
午後2時過ぎ、一行は更に「南宋文化の粋」を求めて「南宋官窯博物館」へと向かいました。杭州市玉皇山の南麓に位置し、中国初の立派な陶磁器専門の博物館です。展示ホールは三つの展示からなり、第一展示室は杭州で出土した歴代の陶磁器が展示され、第二展示室は中国古代の陶磁器の歴史と南宋官窯創設の社会的、政治的、経済的基礎及びその発展過程が展示され、第三展示室は中国の陶磁器模造技術研究及び近代技術で模造した宋代五大名窯の官窯、可窯、汝窯、定窯、釣窯などの陶器の逸品が展示されています。南宋官窯は中国の五大官窯の最高位の地位にあり、現存の遺跡内には1700uの作業場遺跡保護ホールと竜窯遺跡保護廊があります。
一行は先ず、孫先生の案内で、展示ホールに陳列された歴代の陶磁器から宋代の五大名窯から出土した大量の陶器の逸品に圧倒されながら見学しました。なかでも浙江伝統の黄色や緑色に近い釉色とは異なる南宋官窯特有の水色の釉色磁器に魅かれ、しばらくの間、見入っていました。次いで、隣接する登窯遺跡へと向かいました。広々とした作業場遺跡の保護ホールには作業遺跡の上に当時の作業小屋が再現されており、南宋官窯遺跡には立派な捕護廊があって、伝統的な作業場面を当時のままに展示してありました。
午後3時過ぎ、南宋官窯博物館の見学を終えた一行は、夕食までの時間を利用して、西湖西南の山岳地帯にある龍井村の製茶農家へと向かいました。洪さんの知人という製茶農家の女性は一行を暖かく出迎えてくれ、早速、中国を代表する緑茶・ロンジン茶を味わうことができました。女性からはロンジン茶の一番茶から二番茶、三番茶の違いを説明され、一行の女性陣は手土産にと手頃なロンジン茶を購入していました。
午後4時半、楽しいお茶の時間を過ごした一行は、再び西湖へと戻りました。午前中よりも多くの観光客で賑わっており、一行は孫先生から再建された雷峯塔の方向を教えてもらったり、記念撮影をしてもらったりして杭州最後の夕刻のひと時を過ごしました。
午後6時、西湖での散策を終えた一行は再び呉山景区に戻り、レストラン「呉山品悦・豪貨精選酒店」での杭州最後の夕食会となりました。先ずは、今回のツアーでご多忙中にも拘わらず、最初から最後までお世話になった孫国平先生への感謝の意を込めて、陝西省宝鶏市特産の白酒「西鳳酒」で乾杯しました。前日から喉の調子があまり良くないということで、アルコール類を避けられていた孫先生ですが、乾杯での一気飲みで復調され、一行の皆さんも今回のツアーで初の白酒ということもあって、たちまち賑やかな乾杯が続きました。因みに、白酒には八大銘酒というのがあって、茅台酒、五粮液、汾酒等とともに有名なのがこの西鳳酒で、65度と38度の普及版があり、味はサッパリとしていて飲みやすいのが特長とのことです。
孫先生からは今回、一行と同行して皆さんが大変熱心に見学され、中国の考古学に対する学習意欲が非常に高いことが分かって嬉しい旨のお話があり、今後、再び一行が杭州を訪問される機会があれば、大歓迎するとのことでした。
午後8時半、孫先生を囲んでの賑やかな夕食会を終えた一行は、途中で孫先生を降ろし、最後のお別れをしてホテルへと戻りました。
5日目 「浙江省博物館」&「南宋官窯博物館」「杭州博物館」
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