この日は朝の気温17℃ながらも、日中の最高気温は28℃予想の快晴でした。午前6時半からの朝食を済ませ、早めにチェックアウトをした一行は、午前8時15分、李ジュンさんを最後に車に乗り込んで「泰山」へと向かいました。泰山への登り口には既に大勢の観光客が押しかけており、ロープウェイ乗り場のある中腹の「中天門」までは天外村景区の専用バス乗場から次々と発車する満席の遊覧バスに乗り、険しい山道を登っていきました。
中腹の「中天門」からロープウェイ乗り場までは土産物店が軒を並べており、賑やかな観光地の風情でした。8人乗りのロープウェイは急速度で動き出し、頂上の「玉皇頂」を見上げながら「望府山月観峰」まで一気に登っていきました。標高1,545メートルの泰山中腹から7000階段を登ってくる元気な観光客もいました。一行は「玉皇頂」まで300階段もあるという「南天門」付近で一たん自由解散し、各自、思い思いに頂上を目指すことにしました。
泰山は道教の聖地である“五岳”の一つで、“封禅”の儀式が行われる山として有名です。秦の始皇帝が皇帝になった後の紀元前219年に泰山で封禅の儀を行いましたが、このとき既に古い時代の儀式の知識は失われており、儒学者などを集めて封禅の儀式について研究させましたが、意見がまとまらず、結局我流でこれを執り行ったと伝えられています。その儀式の内容は秘密とされており、実際に何が行われたかはよく分かっていません。
頂上への途中には「摩崖碑」と呼ばれる玄宗皇帝が彫らせたという封禅の碑があり、頂上の「玉皇廟」の前には、漢の武帝が建てた「無字碑」と名付けられ高さ5.2メートルの角形の石柱があり、武帝が泰山を封禅した時の象徴とされています。汗をかきながら各自、階段を登っていくと、何と体力に自信がないとおっしゃっていた方が一番先に頂上に登っておられる姿を見つけ、一同、大驚きでした。午前11時45分、全員再集合し、再びロープウェイを利用し、下山しました。
午後1時、一行は昼食のため、泰安市内のレストラン「巨鼎酒店」に到着しました。部屋には既に北京大学の徐天進先生が待機されており、久しぶりの再会を祝って早速、ビールで乾杯しました。徐先生は今回、新学期の多忙な学事日程の中、一行のために、この日から同行していただくことになったものです。徐先生は今夏、新疆ウイグル自治区の古代遺跡を訪ねてこられ、大きな成果があった旨、述べておられました。また、日本の縄文文化ブームのことも現・北京大学客員教授の稲畑耕一郎先生からも伺っていたとのことでした。
午後2時15分、一行は次の目的地である済南市章丘区へと向かいました。泰安市からは北東へ約120キロ、高速道路を利用して約2時間で、トウモロコシと粟畑に囲まれた「城子崖遺跡」の発掘現場に到着しました。立入禁止の看板のかかった金網の向こうでは盛んに発掘作業が行われていました。
午後4時、山東省文物考古研究院の城子崖遺跡考古発掘現地責任者・朱超先生が笑顔で一行を出迎えてくれました。「城子崖遺跡」は1928年に章丘区龍山鎮の城子崖で新石器時代後期の遺跡が発見され、1930年から1931年にかけて初の本格的に発掘が行われて、黒陶が出土しました。黄河中・下流域に分布し、大汶口文化と分布範囲がほぼ一致しており、大汶口文化の上に龍山文化が堆積しているケースが多く、その地名から「龍山文化」と命名されました。現地周辺では龍山文化後の岳石早期・晩期の城壇の発掘から、龍山、岳石、周の3代の段階的城址の発掘が進められており、現在は考古学専攻の学生達を含め、多くの作業員によって城子崖遺跡北城門等の発掘が行われていました。
ここで朱先生とお別れし、隣接する「龍山文化博物館」へと向かいました。入口では副館長の李明通先生が出迎えておられ、早速、館内に案内されました。同博物館には「城子崖遺跡」から発掘された文物とともに、2017年の「中国十大考古新発見」に選ばれた大汶口文化中・晩期の「章丘区焦家遺跡」から発掘された「隋葬玉器」や「黒陶杯」等の貴重な文物が収蔵・展示されており、ここでも「龍山文化」をテーマにした公園を鋭意、建設中とのことでした。
急ぎ足で見学を終えた一行は、車で十数分の所にあるという「章丘区焦家遺跡」へと移動しました。夕闇迫る林間道を徒歩で進むと一軒の建物があり、老人と犬が一行を出迎えてくれました。その先はトウモロコシ畑を伐採した跡のような大地が広がっているだけで、遺跡の面影は何もありませんでした。徐先生の話では、既に2016〜2017年に行われた面積約2170平方メートルにも及び発掘作業を終え、現在は埋め戻されていますが、遺跡の“場所”を知る事にも大きな意義があるとのことでした。この時の発掘で、城壁と壕溝を含めた215基の墓葬、116基の房址、1基の陶釜土等、及び発展段階別の975カ所の灰坑が発見され、世界中の考古学界で大きな話題となりました。
午後6時半、一行は夕闇に包まれた「章丘区焦家遺跡」を出発し、次の予定地の淄博市へと向かいました。車は暗闇の中を約2時間かけて、淄博市内のレストラン「斉軒斎飯店」に到着。豪華な洋風レストランの部屋には、臨淄文物局弁公室主任の呉立国先生がおられて一行を笑顔で出迎えてくれました。この日、徐先生がご当地に来られるというので、後刻、文物局局長の韓偉東先生も来られるとのことでした。徐先生とご一緒すると過去にも行く先々で接待宴が催され、熱烈歓迎を受けました。(\(^o^)/)
午後9時、遅い歓迎夕食会が始まりました。先ずは青島ビールで乾杯の後、徐先生からは現代社会にも通じる古代文化の様々な文物との触合いに考古学の大きな意義があり、卵殻の黒陶杯や玉類等は現代技術で復元できない程、精巧な技術である旨の話がありました。
間もなくして局長の韓先生がお見えになり、徐先生との再会と一行の訪問を歓迎し、改めて白酒で乾杯をしました。50才台の韓先生は一行の年齢を問われ、元気な日本人の訪問客にいたく感激された模様で、ここでも山東式歓待で何回も白酒を勧められました。
午後11時、豪華な部屋での賑やかな宴も進み、多彩な済南料理を堪能した一行は、斜め向かいのホテル「淄博万豪大酒店」に到着。早速、チェックインを済ませてこの日の遅いお開きとなりました。(辛苦了!)
3日目 「滕州大韩墓地」&「大汶口遺跡・大汶河、明石桥、民居」
4日目 「泰山」「城子崖遺跡」「章丘焦家遺跡」
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