毎日エクステンション・プログラム
「山東省の古代遺跡を訪ねる旅」 <報告・2日目>

<2日目> 9月25日 「山東大学博物館」「山東省博物館」&「歓迎夕食会」

ホテル

この日は日中20℃前後の涼しい曇り空の天気。午前6時半からの朝食は、他の宿泊客も少なく、山々に囲まれた済南市内が一望できるホテル最上階の回転式レストランで落ち着いて食することができました。この日は終日済南市内とあって、各自、ホテル周辺の散策等、比較的ゆっくりとした朝のひと時を過ごすことができました。


午前8時40分、一行はホテルを出発し、最初の訪問先の「山東大学博物館」へと向かいました。通勤時間帯で電動自転車が行き交う済南市内を東に進むと、緑に包まれた公園のような山東大学のキャンパスが見えてきました。新学期の始まりで学生の姿も多く、運動場では威勢のいい掛け声に従って軍事訓練をする9月新入生達の姿も見受けられました。

「山東大学博物館」

路先生の先導で、一行は博物館のある高層建物に案内され、見学前に全員揃っての記念撮影をしました。2001年の開学100周年に際して建設された新館内にあり、大学の博物館としては珍しい国家2級博物館に指定されているとのことでした。同博物館には、2010年の「中国十大考古新発見」に選出された「大辛庄遺跡」で発見された殷代の多量の文物、及び、2003年の発掘調査で発見された安陽・殷墟と同様の甲骨片の殆どが保管されていました。また、山東省を中心に紀元前4100年頃から紀元前2600年頃にかけて存在した新石器時代後期の「大汶口文化 」、華北の黄河中流から下流にかけて広がる紀元前3000年から紀元前2000年頃の「龍山文化」、両文化に分類される山東省各地の遺跡から出土した玉器、陶器、青銅器等、様々な文物類が系統的に展示されており、一行は女性係員の説明を聞きながら熱心に見学して回りました。

山東大学博物館

山東大学博物館


博物館の見学を終えた一行は、「山東大学文化遺産研究院」の看板が掲げられた部屋に案内されました。そこには同博物館長で文化遺産研究院院長の方輝教授が待ち構えておられ、一行を熱烈歓迎する旨のご挨拶をいただきました。日本側からは、中国考古学ツアーとして今回で8回目となり、一昨年の四川省・成都で学んだ古蜀の文化、昨年の湖北省・武漢で学んだ楚文化に引き続き、山東省・済南の春秋・斉文化を始め、新石器時代を代表する「大汶口文化 」や「龍山文化」等、壮大な中国文化についての理解を深めたい旨、挨拶しました。

山東大学文化遺産研究院




山東大学文化遺産研究院

午前11時、山東大学博物館での特別見学を終えた一行は、次に「山東省博物館」へと向かいました。同博物館は唯一の省クラスの総合大博物館として百年超の歴史があり、現在の荘厳な建物は1992 年秋に完成したものです。現在の所有収蔵品は21万余件、その中の一級収蔵品は2千件近くに及び、特に陶磁器、青銅器、書画、甲骨、竹簡・木簡、漢代画像石、古典善本等の幅広い収蔵を最大の特色としています。
一行が博物館に到着すると、正面入り口で、女性の楊波・山東省博物館館長と女性係員が笑顔で出迎えてくれました。一行を歓迎するとともに、同博物館の特色と常設展の紹介があり、同博物館が誇る数々の宝物等についてじっくり見学して欲しい旨の挨拶がありました。

山東省博物館


限られた時間内での見学とあって、一行は早速、女性係員の案内で、常設展の「考古山東」から「山東歴史文化展」「漢代画像芸術展」「仏教造像芸術展」へと順に進み、やや急ぎ足での見学となりました。商代の『甲骨文』を始め、新石器時代の「大汶口文化 」から出土した『紅陶獣形壺』、同じく新石器時代の「臨沂大苑庄遺跡」から出土した卵殻のように薄い『蛋売黒陶杯』、商代の「青州蘇埠屯一号墓」から出土した人面銅鉞『亞醜鉞』、「曲阜魯国故戦国墓」から出土した『城魯国大玉壁』、「臨沂銀雀山漢墓」から出土した春秋戦国時代の兵家・孫武による竹簡『孫子兵法』『孫臏兵法 』等、『十大鎮館之宝』として同博物館が誇る国宝級の文物の前では、女性係員の説明を聞きながら、一行は盛んに撮影をしていました。この時、李ジュンさんは時々行方不明でした。

山東省博物館

山東省博物館


午後1時、山東省博物館の見学を終えた一行は済南市内に戻り、レストラン「城南往事」での昼食タイムとなりました。先ずは2時間に及ぶ博物館の見学で疲れた体に、5%以下のアルコール度の低いビールで乾杯しました。山東料理・魯菜とは春秋戦国時代の斉国と魯国の料理で、秦漢時代に定着し、宋代以後、魯菜は中国の北方の代表的な料理になり、中国八大料理の一つとされています。饅頭や野菜類・蒲菜を主な材料にした蒲菜炒肉、蝦子炒蒲菜、奶湯蒲菜等、多彩な郷土料理で、この日の昼食を含め、各地で美味しく頂きました。

昼食


午後2時半、昼食を終えた一行は今回の考古学ツアーの受入等で協力いただいた「山東省文物考古研究院」へと向かいました。済南市内にある同研究院の建物は、1992年に成立された五大宗教による慈善団体「万字会」の旧祉で、主にコンクリートで作られた明代形式の古びた建物とのこと。目下、別の場所に新しい研究院の建物を建築中とのことでした。

山東省文物考古研究院

車が敷地の中庭まで入ると、同研究院副書記の劉延常先生と研究館員の張溯先生が待ち構えておられ、初対面の挨拶を交わしました。静かな邸内をゆっくりと散策しながら、一行は古式豊かな建物の一室に案内され、そこで劉延常先生の講師でプロジェクターを使っての「特別講義」が始まりました。『山東地区重要考古発見と研究』がテーマで、山東省の独特な地形と自然気候により、古代歴史、文化と社会等、東方文化の気質が伝統的に継承されてきた旨の前解説があり、1)人類重要起源地の一・旧石器文化遺存、2)新・旧石器時代過度的見証・細石器文化、3)従野蛮至文明・完善的新石器文化譜系、4)夷夏、夷商文化的融合、5)斎魯地域文化的形成、6)漢代的繁栄、7)持続発展的歴史時代、以上の7項目にわたって解説が行われ、最後に、山東地区の文明は世界の東方文化の形成に重要な影響を与え、日本の弥生文化や歴史、生活具とも密接な関係がある旨、述べられました。

これに対し、日本側からは“盗掘”の実態についての質問がありましたが、今は公安による厳しい取り締まりが行われているため、殆どないとのことでした。次いで、劉延常先生への感謝の意を込めて、最近、日本でブームとなっている“縄文文化”について、今夏、東京国立博物館で開催された特別展「縄文―1万年の美の鼓動」の爆発的な人気の様子を紹介しながら、同展覧会の豪華カタログを贈呈し、劉先生は大喜びのご様子でした。

山東省文物考古研究院


約1時間半にわたる「特別講義」の後、別棟の文物庫に案内され、狭い棚には新石器時代の「章丘城子崖遺址」「泰安大汶口遺址」「臨淄辛店戦国墓」等、后李文化から北辛文化、大汶口文化、龍山文化、岳石文化に至る陶器類がびっしりと整理・修復されていました。
午後5時過ぎ、研究院近くのレストランでの「歓迎夕食会」に臨むため、一行は徒歩で向かいました。「山東省軍隊離休退休干部・服務帖」の看板のかかった建物の中にあるレストラン内部は超豪華な雰囲気で、大きなターンテーブルには多彩な料理が並んでいました。

夕食

夕食

「歓迎夕食会」には、新たに同研究院の孔子75代目という孔勝利先生も参加され、劉延常先生の熱烈歓迎の挨拶と乾杯から始まりました。日本側からは過去の考古学ツアーのレポートを紹介し、今回の山東省訪問に当たって絶大なご尽力いただいたことに改めて感謝するとともに、山東省の古代文化と日本の古代文化の密接な関係を改めて知らされた旨、返礼の挨拶がありました。

宴が進むにつれて、山東省は中国でも酒席の“掟”のようなものが発達しており、予め白酒をしこたま飲ませられると聞かされていましたので、用心しながらも52%の白酒はさすがに強烈でした。しかし、元気な孔勝利先生の勧めで、ホストから受けた杯を“一気飲み”し、これを、身分が上の人間から順番に続けて受けていくのが礼儀とのことで、先ずはホスト役の劉先生の一気飲みを3回受けました。その後、一行は孔先生の杯を順に受けるという具合に次々と進んでいき、さすがに筆者も山東式の歓待にダウンしてしまいました。こうして賑やかな宴は考古学の話もそっちのけにして、午後9時頃にお開きとなりました。

* * *

追記:筆者はホテルに戻ってバーで酔いを醒ますため、冷たい飲み物を注文したとの事ですが、この時の記憶がなく、“イモトのWiFi”セット一式を落として最終日の青島のホテルで受け取るまで使うことができませんでした。(南無!)



 「山東省の古代遺跡を訪ねる旅」 報告

報告 1日目 出国・入国 & 「中秋節」

報告 2日目 「山東大学博物館」「山東省博物館」&「歓迎夕食会」

報告 3日目 「滕州大韩墓地」&「大汶口遺跡・大汶河、明石桥、民居」

報告 4日目 「泰山」「城子崖遺跡」「章丘焦家遺跡」

報告 5日目 「斉文化博物館」「斉国故排水道遺址」「殉場坑遺址」

報告 6日目 「青州市博物館」「駝山石窟」「青州古街」

報告 7日目 「青島市博物館」& 出国・帰国


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