毎日エクステンション・プログラム
「稲作のルーツ&南宋文化の粋を訪ねる旅」 <報告・3日目>

<3日目> 「欄亭・魯迅故居」&「河姆渡遺跡博物館」

この日は気温30度前後の曇り空の朝。午前8時、一行は早めの朝食を済ませてチェックアウトし、杭州市の南隣に位置する紹興市へと向かいました。途中、杭州市内で孫先生とオーストラリアの学者ご夫妻の3人をピックアップし、運転手を除いた総勢10名での日・中・豪の考古学ツアーが賑やかにスタートしました。

この日の目的は“稲作のルーツ”である余姚市の「河姆渡遺跡」の見学でしたが、途中の紹興市には王羲之が書いた中国で最も有名な書道作品「蘭亭序」があることから、徐天進先生のお薦めもあって「魯迅故居」とともに見学することにしたものです。通勤ラッシュの杭州市内から寧波に向かう高速道路を南へと進むと、沿線には立派な建物や高層マンションが延々と立ち並び、広大なニュータウンが広がっていました。午後10時半、一行はやがて緑豊かな水郷の街・紹興市を通過し、南西山麓に位置する「欄亭」に到着しました。入口近くの広場は、既に大勢の観光客で賑わっていました。


欄亭 欄亭 欄亭


ここ「蘭亭」は353年(東普の永和9 年)3月3日、王羲之と当時の名士たち41名がこの地で集まり、曲水の両側に座り、清流に流された酒盃が自分の前で止まったら即興で歌を詠むという宴会を楽しんだとされています。その時、37首の詩が詠まれ、王羲之により一編の序文が作られました。これが有名な王羲之の代表作「蘭亭序」です。王羲之は書道の革命家とも言われ、その後の書道家たちに大きな影響を及ぼしました。唐の太宗もまた書道をよくする人で、太宗が崩じた時に、「蘭亭序」を含む王羲之の真筆すべてを一緒に陵墓に埋めてしまったため、王羲之の真筆は存在しません。現在、王羲之の書とされているものも、唐代に太宗の命令で複写したものか、太宗が作らせた拓本のみであると言われています。洪さんの説明では、文化大革命で大部分が破壊されましたが、その後、内外の書道家達の要望もあって復元・修復されたとのことでした。


快園閣


午前11時15分、小雨降る中、急ぎ足で「欄亭」を見学した一行は、紹興市内に戻って、レストラン「快園閣」での昼食タイムとなりました。この日から1泊2日間の予定で、一行と同行された学者ご夫妻のMr.Baden Cameronと Dr.Judith Cameronとは、英語堪能な一行のお一人が通訳代わりとなっての和やかな昼食タイムとなりました。ご夫妻は上海での学会の帰路に杭州に立ち寄られたとのことで、奥様の方はキャンベラにあるオーストラリア国立大学の考古学のドクターで、長年、東南アジアと太平洋地域の国際考古学プロジェクトのテキスタイル専門家として携わっておられるとのことでした。

午後1時半、一行は「魯迅故居」へと向かいました。水郷の街と称されるだけに、網目のように水路が街中に広がっており、旧市街の中心部、解放路と中興路に挟まれた魯迅中路に「魯迅故居」がありました。この一帯は紹興を代表する観光スポットで、魯迅記念館、咸亨新天地(咸亨ホテル)、魯迅故居、土谷祠、百草園、長慶寺、三昧書屋といった魯迅ゆかりの施設や建物が集まっています。「魯迅故居」というのは中国各地にもありますが、少年期を過ごした場所ということで、ここは正に魯迅の故郷と言えます。周囲一帯はテーマパークの様相で土産物店が立ち並び、大勢の中国人観光客で賑わっていました。


魯迅故居 魯迅故居


魯迅(1881年〜1936年)は、日本の東北大学に入学し、日本で中国民衆の革命に目覚め、中国の伝統的な支配体制と、支配体制を支える儒教や悪霊支配に対して、文学という手段を使って戦い続けた人として知られています。代表作に『阿Q正伝』、『狂人日記』等があり、短編作である『狂人日記』は旧来の中国文学が文語主体なのに対し、口語を主体とし、被害妄想狂の心理を実にリアルに描写している点において画期的だと言われています。1904年9月から1906年3月までの約1年半しか仙台にいませんでしたが、現在も仙台市や東北大学では様々な面で魯迅を通じた交流が行われています。

午後2時45分、一行は再び高速道路を経由して、本日の目的地である余姚市の「河姆渡遺跡」へと向かいました。紹興市郊外も余姚市も沿線には高層マンションや工場が立ち並び、中国の地方都市に共通した光景が広がっていました。やがて高速を降り、午後3時半、一行は余姚市郊外の四明山の麓に位置する「河姆渡遺跡博物館」に到着しました。


河姆渡遺跡博物館


「河姆渡遺跡博物館」は2009年5月に大規模な新装工事が行われ、建築面積は4000uあり、文物展示区と遺跡展示区に分けて世界最古の栽培水稲等が展示されています。学術報告ホールや応接室も設置されており、一行は立派な応接室に案内され、孫先生の説明とともに「河姆渡文化」の紹介ビデオを観賞した後、一行には唯一の日本語ガイド、Cameronご夫妻には英語ガイドの案内で展示区を見学しました。


河姆渡遺跡博物館


河姆渡周辺は地勢的に古くより水害に悩まされていたことから、1973年、人民公社が低地にある稲田を保護する目的で、土地改造を行うべく地下3m以上まで深く掘り進んだところ、偶然に文化層に突き当たり、多くの陶片や骨が出土しました。これが「河姆渡遺跡」の発見でした。発見年と1976年の2度に亘る大規模な発掘の結果、約7000年前の稲作農耕集落遺跡であることが判明しました。遺跡面積は2,800u、出土文物は6,700件と非常に広大かつ貴重な遺跡であり、1982年に「全国重点文物保護単位」に指定されました。遺跡は上から順に第一層〜第四層の4つの文化層に分類されていますが、表層に近い第一層と第二層は一般的な長江流域新石器文化ですので、特徴のある第三層、第四層文化を特に「河姆渡文化」と称されています。

従来、中国の新石器文化は仰韶文化に代表される黄河流域から発展したものと考えられていましたが、この河姆渡遺跡の発見により、長江流域にも黄河流域と同年代に新石器文化が存在していたことが確認されました。これによって、中国大陸の新石器文化は、特定の場所から発祥して伝播していったのではなく、同時多元的に発生したのではないか、と推測されるに至っています。河姆渡遺跡の周辺は地下水位が高く、特に第四層は現在の海面より低いような状態であったことから、本来は腐食して消滅してしまう筈の物質が自然保存され、大量出土しました。

文物展示区には文物320点の中に、国宝級の出土品「双鳥朝陽象牙蝶形器」が展示されていますが、これは象牙でできた祭祀用品で、このうち五つの大きさの異なった同心円が太陽紋で、上の炎は太陽の光を象徴しており、両側は鳥です。当時の人々は長きにわたる生産と労働の中から、水稲を含む万物の成長は、太陽と切り離すことができないことを悟っていました。一方、鳥は種まきと収穫時期の情報をもたらすと同時に、人と太陽の付き合いの使者でもあり、太陽と鳥が河姆渡の人々のトーテムになっていたとのことです。


河姆渡遺跡博物館 展示物


午後4時半、一行は博物館に隣接する河姆渡遺跡に案内されました。主に第四層に分布している木造建築遺構であり、現在、発掘された当時の様子を再現展示してあります。埋め戻した発掘区の上に発掘当時の規模と位置を再現したものであり、実際の第四層遺跡は現在の地表から約4m下にあります。大量に列をなしている杭木以外にも、梁や板が発見されていることから、これらの杭木は高床式建築の柱部分と推定されています。日本の弥生時代遺構にみられる高床式建築では数の少ない太い柱を基本としていますが、河姆渡遺跡の高床式木造建築では多くの細い柱の上に建築物を建てていたことが伺えます。


河姆渡遺跡 河姆渡遺跡


河姆渡遺跡の見学を終えた一行は一旦、余姚市内の中心街にあるホテル「余姚賓館」にチェックイン。午後6時半、Cameronご夫妻は地元料理を避けてホテル内のレストランでの夕食とのことで、一行は孫先生とともに市内のレストラン「南山飯店」での夕食タイムとなりました。洪さんの話によりますと、紹興市には日本の宝酒造との合弁会社が紹興酒を製造しているが、主に輸出用の機械作りとのこと。ここでは本番の手作り紹興酒を味わうべきとのことで、早速、高価な徳利姿の本番の紹興酒で乾杯し、更に1本追加するほどの美味でした。孫先生はすっかりご機嫌で、これまでの遺跡発掘の数々の成果について誇らしげに話され、話題は更に黄河文明と長江文明の続きへ移り、河姆渡遺跡の発見が稲作文化のルーツとして日本人に大きな影響を与え、長江文明の存在を見直すきっかけにもなった等、お互い自由に話し合いました。午後9時、夕食を済ませた一行は、ホテルへと戻り、明日に備えて早めの就寝となりました。


河姆渡遺跡


 「稲作のルーツ&南宋文化の粋を訪ねる旅」 報告

報告 1日目 出国・入国&歓迎夕食会

報告 2日目 「特別講義」&「良渚博物院」「良渚遺跡」

報告 3日目 「欄亭・魯迅故居」&「河姆渡遺跡博物館」

報告 4日目 「田螺山遺跡」&「上林湖越窯遺跡」「跨湖橋遺跡」

報告 5日目 「浙江省博物館」&「南宋官窯博物館」「杭州博物館」

報告 6日目 上海移動&出境・帰国


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