毎日エクステンション・プログラム
「陝西省西安・考古工作視察の旅」 <報告・5日目>

<5日目> 10/25 「周原遺跡」視察

10月25日午前7時半、気温9℃、晴れの天気。一行は西安の西120キロの宝鶏市岐山に位置する「周原遺跡」へと向かいました。この日、長老は旅の疲れもあって終日、ホテルにて休息されることになりました。土曜日とあってか大きな渋滞もなく、西安市内を順調に走り抜け、焦先生の車両を先導にして高速道路へと入り、宝鶏市方面に向かって進みました。焦先生の運転はやや暴走気味でどんどんとスピードを増し、しばらくすると見失ってしまいました。この日も沿線の高層マンション群の後方には、朝モヤに浮かぶ美しい岐山の峰々が見え隠れしていました。やがて高速道路の先には「法門寺」行きの道路標式が見え、車両は大きく右に旋回して、まだ真新しい高速道路を岐山の麓に向かって進んで行きました。左右の沿線には黄土高原の切り立った崖や田畑が広がり、3年前に土埃を立てて田舎道を法門寺まで訪れた時とは様変わりの様相を呈していました。


宝鶏市周原博物館


午前9時、法門寺入口で高速道路を下り、道端でのタバコ、トイレ休憩の後、再び焦先生の先導で岐山の麓に向かって進みました。前方に法門寺のシンボルの菱形モニュメントが見え始めると、車両は大きく左側に大きく旋回し、見渡す限りのリンゴ畑や“鎮”と言われる小さな農村を通り抜けた所に「宝鶏市周原博物館」がありました。

周原遺跡の“周原”とは周王朝(西周)を建てた周人発祥の地という意味で、西周初期(紀元前11〜8世紀頃)の都市遺跡です。1976年から発掘が開始され、建築物跡や土木構造物跡のほか、考古学上重要な文物を含め、大量の甲骨や青銅器などが出土しています。陝西省扶風県と岐山県の境に位置しており、保護対象となっている面積は24平方キロに及びます。一帯には西周期の宗廟もあり、発掘された文物は豊富で、これまでにも数万点の文物が出土しています。中でも、同遺跡から出土する青銅器と銘文が豊富で、考古学的価値が高いため、「青銅器の里」とも呼ばれています。1982年には、国務院より「全国重点文物保護単位」に指定されました。1999年に北京大学考古文博学院、中国社会科学院考古研究所、陝西省考古研究院の共同調査チームが、改めて大規模で長期的な科学考古学発掘を行った結果、前後して西周期の大型建築や道路の跡等が見つかり、数多くの珍しい文物も出土したことで、内外の学界から高い関心が寄せられました。


集合写真


博物館には、周原遺跡の古い文物や記録写真等が展示してあり、その中には若い頃の焦先生や徐天進先生の姿も映っていました。急ぎ足で見学を終えた一行は、博物館で寝泊まりし、発掘調査に携わっているという日本人の東大院生と韓国人のハーバード大院生の留学生二人を紹介され、異民族の侵略から逃れて周一族を当地に連れて来たと言う“古公”の像の前で記念撮影をした後、一緒に近くの発掘現場へと急ぎました。


発掘現場


午前10時半、気温25℃の炎天下、岐山の麓に広がる小麦畑の一角に、日よけ用の大きな赤いパラソルや麦わら帽を被った大勢の人々が発掘作業している姿が見えてきました。北京大学の実習生達が地元の農民作業員とともに発掘中の「周原遺跡」です。北京大学考古文博学院の雷興山先生が真っ黒に日焼けした顔に満面の笑みを浮かべて、焦先生一行を出迎えてくれました。雷先生はここで筑波大出身の日本女性と韓国人男性の留学生を紹介してくれ、東大の留学生達とともに一行の発掘現場の視察・実習に立ち会ってくれました。


発掘現場


2008年末までに徐天進先生達が行った地面調査、ボーリング及び発掘調査で、墓地、居住跡、作坊跡、周辺の4分野で一連の考古学的な成果が得られました。2009年来日時の徐天進先生の講演によりますと、墓地については、1000基近い西周時代の墓の中でも、遺跡北部にある大型墓群・陵坡墓地の発見が最も注目されており、4本、3本の墓道や車馬坑を持った墓は、これまでに発見された西周時代の墓地の中でも最高級クラスのもので、墓地の東、西、北の三面には外周を取り巻く版築壁も発見され、陵園の囲壁の可能性があるとのことでした。現在は、更に周辺地域の西周代の墓地・墓葬をはじめ、大型の版築建築跡の発掘調査が行われており、少し離れた場所に、本年8月に新たに発見された“車馬坑”があり、本年10月中旬に徐天進先生達、専門家が集まって、今後の発掘方法や保存方法についての重要会議が開催されたとのことでした。新たな車馬坑が発見されたということは、周辺に別の車馬坑があり、位の高い周人の墓葬がある可能性が高いとのことでした。


発掘現場


車馬坑の南側の麦畑には、碁盤目のように規則正しい“洛陽鐕”の掘削穴があり、その先に別の発掘現場があって、北京大の実習生達とともに大勢の農民作業員達が忙しく動き回っていました。一行は1.5メートル程掘り下げた発掘現場に立ち入り、北京大生の説明に耳を傾けました。ここは西周から漢代にかけての何代もの墓葬群があり、古い墓葬の上に新たな墓葬を重ねた形跡もあって、複雑な様相を呈しているとのことでした。


周原遺跡
周原遺跡


正午となり、農民作業員達は昼食のため一斉に並んで村へと引き返し、一行も発掘現場から歩いて7、8分程の村はずれにある2階建ての「岐山県博物館」へと向かいました。そこはテラスに洗濯物がずらりと干された北京大実習生達の合同宿舎となっていました。宿舎の食堂にて、留学生達も一緒になっての昼食でした。焦先生一行を歓迎するため、大人達には昼間から52度の白酒が振る舞われ、王先生や北京大の先生方による何回もの乾杯に合わせて、東京都のお一人と筆者も一気飲みを繰り返し、特別の田舎料理を堪能しました。


昼食


昼食を終えた一行は、焦先生達と一旦、お別れをし、午後2時から再開される発掘作業の前に、案内役の留学生達とともに発掘現場へと戻り、深く掘り下げられた発掘現場で、西周王朝から何代にも渡って破壊が繰り返されて人口的に堆積されたゴミ土砂と、自然の堆積土砂の見分け方等について縷々説明を受け、早速、注意を受けながら実習を行いました。それぞれの発掘現場では二人の北京大生が責任者となり、数人の農民作業員達に指示しながら作業を進めているとのことですが、日本の発掘現場では、学生達が発掘現場の責任者になるということは考えらないとのことでした。


周原遺跡


午後2時半、炎天下での視察を終えた一行は、日中での想定外の暑さと実習の疲れで熟睡しながらホテルへと向かいました。西安市内に入り、土曜日の夕暮れとあって大勢の人々で賑わう中、西安城内の中心地にある「鐘楼」に立ち寄ることにしました。以前に訪れた時と周辺は様変わりしており、広場では若者がギター片手に路上ライブをしたりして賑わっていました。地下街の人混みを掻き分けながら、鐘楼2階に上ると、午後4時半からの演奏が既に始まっており、多くの観客の後ろから背伸びをして“編鐘”の演奏を聴きました。

有名な“曽候乙墓”の編鐘には、5音階、7音階、更には西洋音楽の12平均律に匹敵する独自の12律が存在し、既に転調の発想があったことが実証されています。この日の最後の曲は、美しい音色の“蛍の光”の演奏でした。


鐘楼


午後6時、ホテルに戻った一行は待機中の長老と合流し、新たに身支度をして焦先生接待の「歓送夕食会」のため、焦先生のご案内でホテル近くのレストランへと向かいました。2日前と同じ「小六湯包」でしたが2階の個室が用意され、焦先生をはじめ、焦先生の奥様とお嬢様、シルクロード研究で著名な西北大学文化遺産学院の王建新先生、古代西蔵遺跡専門の陝西省考古研究院の張建林先生、東京都のお一人を含めた6名が参加されました


歓送夕食会
歓送夕食会


先ずは、焦先生出身地の高価な白酒で乾杯し、互いに形苦しい挨拶を抜きにした和やかな宴が始まりました。一行からは、3日間に渡る発掘現場の視察と実習について感想が述べられ、今後とも今回の貴重な体験を活かして中国古代史の勉学に励みたい旨の発言がありました。王先生に対する新疆ウィグル自治区の不安定な情勢についての質問に対し、中央アジアのムスリムと中東やアフリカのムスリムの違いやコーランの解釈の違い等、興味ある話を聞くことができました。張建林先生からは古代の西蔵遺跡には寺院等の建物は少なく、ボン教や古代仏教の埋蔵経典等の発掘が主である旨、伺いました。また、焦先生の奥様は西安外国語大学の英語教師をされ、お嬢様はハワイ大学孔子学院の中国語教師をされているとのことで、女性陣は片言英語で質疑しながら、会話を楽しんでおられました。

午後8時、歓送夕食会に参加された先生方に感謝申し上げるとともに、引退後も海外出張等で超多忙な焦先生が一行のために連日、早朝から考古工作地の視察にご同行いただき、ご指導いただいことに対して、一行は心からの感謝と御礼を申し上げ、楽しい宴はお開きとなりました。


 「陝西省西安・考古工作視察の旅」 報告

報告 1日目 出国&「中国国家博物館」特別見学

報告 2日目 「高速鉄道の旅」&「陝西省考古研究院」表敬訪問

報告 3日目 「漢長安城未央宮遺跡」&「秦漢渭河橋遺跡」視察

報告 4日目 咸陽「漢武帝茂陵」視察

報告 5日目 「周原遺跡」視察

報告 6日目 帰国の途へ


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