毎日エクステンション・プログラム
「福建省の古代遺跡を訪ねる旅」 <報告・5日目>

<5日目> 9月28日 「崇明古陶瓷博物館」「大紅袍茶樹」「遇林亭窯址」

この日は気温21℃の薄曇りの涼しい朝でした。午前7時半、早めの朝食を済ませた一行は当初の予定を変更して、武夷山市から南南西へ約130キロの南平市光澤県崇仁鎮に位置する「崇明古陶瓷博物館」に向かいました。ここは徐先生の知人が開設した個人コレクターの古代陶器専門の博物館で、数年前に現地の考古関係者から徐先生宛に閩北一体の墓群から出土した古陶瓷類を鑑定して欲しいとの連絡があり、駆け付けると完全な姿の古陶瓷類が大量にあり、中でも夏王朝時代の「二里頭遺跡」から発掘された古陶や青銅器類と同じ形のものがあったとのこと。新発見と判断した徐先生は本格的に調査を開始し、2年前に北京大学と崇明古陶瓷博物館の共同で『閩北古陶録・全2巻』を緊急刊行したとのことでした。

「崇明古陶瓷博物館」


午前9時半、閩北一体の山林管理関係の仕事をしているという私設博物館館長の傳先生が一行を出迎えてくれました。厳重に鍵のかかった博物館に入ると、そこは想像を絶する古陶瓷類の宝庫でした。徐先生の説明で、一行は「二里頭遺跡」と同型だという文物を直接手に取って観察する誠に贅沢な体験をしました。お茶をよばれながら小休憩していると、傳先生は次から次へと新しい古陶類や青銅鼓、玉器等の秘蔵物を奥から持ち出し、徐先生に鑑定してもらっていました。ふと気が付くと、テーブルの上には宋代の茶碗や壺が無造作に置かれ、灰皿代わりになっていました。

「崇明古陶瓷博物館」

次に一行は、傳先生の元気な弟さんに案内され、親族専用の食堂にて自家製の紹興酒で乾杯し、ご家族とともに郷土色豊かな御馳走を味わいながらの賑やかな昼食タイムとなりました。この弟さんは鶏肉生産では世界で5番目、従業員3万人の大会社の社長さんで、日本を始め世界中に輸出していると大いに自慢していました。人生の楽しみは酒と煙草と〇〇だとか言って豪快に笑っていました。



武夷山風景区

午後4時過ぎ、傳兄弟と別れた一行は武夷山市へと戻り、貴重な野生の「大紅袍茶樹」が4本自生しているという武夷山風景区に入っていきました。武夷山はウーロン茶の銘茶として名高い“岩茶”の産地として知られ、1999年に世界遺産の自然・文化の複合遺産として登録されました。中国人にとっては、黄山や桂林と並んで憧れの場所となっています。

武夷山風景区

同じ茶樹でも切り立った岩間の日照時間によって様々な種類がある事を学んだ一行は、夕陽が沈みかけた夕刻、風景区の北西に位置する「建窯遺跡・遇林亭窯祉」へと向かいました。訪れる人も無く、ひっそりとした山間の公園内にある宋代の登り窯の古窯跡です。1950年代に発見され、曜変天目茶碗で有名な水吉鎮の建窯遺跡群と同様に、黒釉の天目茶碗が作られていたとされています。遺跡には1号窯と2号窯があり、1号窯は山の斜面を利用した登り窯(龍窯)で全長73メートル、2号窯は同じ登り窯ですがS字型の全長113メートルもあります。発見された器類はほとんどが黒釉で、中には青白釉の器や金銀彩は施された破片などもあったとのことです。この日、一行は窯脇の水溜りで破片探しをし、いくつか見つけて徐先生に本物かどうか聞いていました。

建窯遺跡・遇林亭窯祉
建窯遺跡・遇林亭窯祉



この日の見学を終えてホテルへ戻るものと思っていると、徐先生がもう1カ所立ち寄りたい所があるとのことでした。すっかり日も沈んだ広い暗闇の庭先に明るく輝く瀟洒な建物が見えてきました。どうも徐先生が建物全体のコンセプト作りに深く関係された超豪華な会員制民宿のようで、室内のあちこちに徐先生ご夫妻の作品が飾られていました。一行はわずか8部屋しかないという個室や畳の大部屋を見学した後、庭先から見えた茶席へと案内され、何と一袋500元もするという高級ウーロン茶で2人の女性の格式ある中国式お点前を拝見しながら、秋の夜長の豪勢なひと時を堪能することができました。

会員制民宿
会員制民宿



午後8時頃、一行はホテルに戻り、遅い夕食タイムとなりました。私設の陶瓷博物館での貴重な体験と格式高い中国式お点前を堪能した一行は、早速、李ジュンさんが用意したドイツ製など数種類のビールで乾杯しました。徐先生は普段はあまり酒類を口にされませんが、この夜は一行に武夷山での中国式の優雅な茶席文化を紹介したかったようで、すこぶるご機嫌のご様子、ビールでの乾杯に加わっておられました。

この夜の話題は、閩北一体から出土した今回の古陶瓷類と「二里頭遺跡」から発掘された陶器や青銅器類との関係でした。「二里頭遺跡」は黄河中流から下流を中心に栄えた新石器時代から青銅器時代初期にかけての文化であり、その遺跡から発掘された文物と同じ形の陶器類が何故、南方の閩北地方で発見されたのかは大きな謎。閩北地方には銅鉱遺跡がなく、陶器類で後に真似たのか、或いは余りにも精巧な技術であることから「二里頭遺跡」より先に発展普及していたのか、今後の重要な研究テーマだとのことでした。徐先生は多忙で論文を書く時間がないとのことなので、代わりに筆者が傳館長から帰路に譲渡された『閩北古陶録・全2巻』で研究し、論文に挑戦すると言って大笑いでした。

別途、この日のガイドの姚麗芬さんは朝からテンション高く、いきなり“ハロー”から始まり、行く先々で徐先生とのツーショット写真に収まっていました。前日に徐先生のことを調べて著名な考古学者である事を知り、知人に自慢するためとのことでした。

夕食




 「福建省の古代遺跡を訪ねる旅」 報告

報告 1日目 出国・入国 & 福州市への移動

報告 2日目「福州開元寺」「昙石山遺蹟」&「福建省博物院」

報告 3日目 「明渓南山遺跡」&「万寿岩遺跡」

報告 4日目 「城村漢城遺跡」「孫建興老師工房」「竜頭山遺跡」

報告 5日目 「崇明古陶瓷博物館」「大紅袍茶樹」「遇林亭窯址」

報告 6日目 「武夷山風景区」「御茶園遺跡」& 厦門への移動

報告 7日目 「コロンス島」& 出国・帰国


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