第1回 毎日エクステンション・プログラム 入門セミナー報告

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盛況の内に終了!中国考古学入門セミナー・レポート

【セミナー報告】
第一回 毎日エクステンションプログラム 中国考古学入門セミナー

 「旅する前の世界遺産
」〜世界遺産から見た中国の歴史〜
  
  講師: 世界遺産検定マイスター・佐滝 剛弘 (さたき よしひろ)
 日時: 2009年5月30日(土)  会場: 東京・竹橋 パレスサイドビル内・マイナビルーム




「毎日エクステンション・プログラム」の初めての試みとして5月30日に開催された「中国考古学入門セミナー」が盛況の内に終了しましたので、その結果についてご報告申し上げます。
世界遺産アカデミーの協賛の下に開催されたこともあり、受講者は同アカデミーの個人会員や世界遺産検定の有資格者が大半を占めましたが、一般参加の方も含め、定員30名の会場は、熱心な受講生でほぼ満席状態となりました。

講師の佐滝 剛弘氏

▲講師の佐滝 剛弘氏


講演に先立ち、講師の佐滝剛弘氏が受講者の皆さんに対し、今回の入門セミナーに参加された動機を伺ったところ、「世界遺産」の挙手が大多数を占め、「中国」は少数。このため、講演内容も「中国」の世界遺産だけに絞らず、「世界遺産」全般に関わる話題や問題点などが数多く取り上げられ、貴重なスライド写真とともに紹介されました。

以下、当日のレジュメに従ってその概要をご紹介します。

講演の内容  (概要)

講師プロフィール
佐滝剛弘氏
佐滝 剛弘 (さたき よしひろ)

1960年、愛知県生まれ。東京大学教養学部(人文地理)卒業後、NHK入局。国内外の旅が趣味。1997年からこれまでに、50ヵ国、220件あまりの世界遺産を実際に訪れている。こうした体験をもとに、世界遺産、産業遺産などに関する執筆、講演活動を行っており、主な著書として「知られざる世界遺産を訪ねて」(中央公論2006年2月号)「旅する前の世界遺産」(文春新書)「日本のシルクロード・富岡製糸場と絹産業遺産群」(中公新書ラクレ)などがある。本業は、NHKのディレクターで、現在も、報道番組、紀行番組などを中心に手がけている。



1.世界遺産から見えるもの

先ず、世界遺産は決して有名な観光地とイコールではないこと。有名な杭州の西湖や景徳鎮、桂林などは世界遺産に登録されず、登録以前はほとんど無名だった九寨溝や麗江などが登録されている。世界的にもナイアガラ滝やバッキンガム宮殿が世界遺産未登録である。また、世界遺産は不動産に限られていること。持ち運べる物は対象外で、ルーブル美術館も世界遺産だが、展示されている芸術品は世界遺産ではない。

各国の世界遺産は自国の文化、思想、本質、すなわち自国のアイデンティティである。例えば、近代400年、「水」と闘い続けたオランダの世界遺産の「キンデルダイク風車群」や「ベームスター干拓地」などは、すべて「水」と関わりがある。


2.中国の世界遺産の概要
佐滝剛弘氏

現在、中国の世界遺産は37件あり、イタリアの43件、スペインの40件に次いで世界第3位を占めている。80年代の6件から、90年代17件、2000年代14件と最近の登録が多く、更に西湖、桂林、シルクロードなど52の暫定リスト物件がある。

次いで、旧石器時代から清末・中華民国時代まで、37件の世界遺産を時代順に辿り、周口店の北京原人遺跡、安陽の殷墟などがリアルなスライド写真で紹介され、多民族国家・中国の戦いの歴史を、世界遺産を通して学んだ。特に明・清代550年は中国文化の爛熟期で、故宮、天壇、万里の長城、頤和円など、北京市には6件の世界遺産があり、一都市としては世界最多となっている。


3.中国の世界遺産ブーム

近年、中国の目覚ましい経済成長に伴い、中国国内での旅行が原則的に自由化されたことから、旅行ブームが到来し、特に世界遺産に登録された九寨溝や黄龍などは急速に観光地と化している。世界遺産にほとんど関心を示さない米国人に比べ、中国人や日本人は自国の世界遺産登録を機にした世界遺産ブームは高まる一方である。関連する書籍や切手の発行数でも、その国の世界遺産への関心度が分かる。


4.世界遺産に見る「中国帝国」の周辺国への影響

中国周辺国の世界遺産としては、奈良(平城京と唐招提寺)、京都(延暦寺、金閣寺)、沖縄(首里城)、ベトナム(フエの建造物群)などが存在するが、いずれも「中国帝国」の影響を多大に受けている。


5.世界遺産から考える「日中」関係

今、中国ではハルピン郊外にある旧日本軍の「731部隊本部跡」を世界遺産に登録しようという運動がある。広島の「原爆ドーム」の世界遺産登録時、日本は侵略国なのに世界遺産になることで、“被害国”の象徴になってしまうという理由から、中国と米国は反対した。同様に「アウシュビッツ」が世界遺産となった時、ポーランドは自国が「悪」のイメージと誤解されることを恐れ、「ナチス・ドイツによる」と明記されたが、ドイツはこれに対して何の苦情も言わなかった。戦後、ドイツは国の内外に対し、「ナチス・ドイツの罪・戦後責任」を明らかにしていたのが大きな理由。このように「負」の遺産として世界遺産が登録されることもある。


6.さいごに

世界遺産が示すものは、文化の多様性と普遍性であり、その文化には優劣はない。中国も多民族国家であり、民族間、国家間の異種交流の上に成り立った文化である。人的交流でお互いの文化に敬意を払うことで相互理解を深めることができ、そうした意味から個人旅行の拡大に期待したい。「平和」と「環境」という人類共通の課題のリトマス試験紙、それが世界遺産である。




セミナー会場の様子

▲熱心な受講生で会場は満席に

以上、当初90分の講演予定時間を15分ほどオーバーしての熱演に対し、受講者からは「時間が足りず、もっともっと話を聞きたかった」「世界遺産は自国のアイデンティティだという言葉が響きました」「中国の世界遺産と他の情報を結びつける話題はとても身についた」「苦手な中国が大変分かりやすく、また国というくくりでなく、あくまで世界遺産の観点から学習でき、よかった」など、概ね高い評価の感想が多く、今後、取り上げて欲しいテーマとしては、中国の続編とともに、東南アジアやヨーロッパなど、いろいろな国の入門セミナーを開催して欲しいという声が寄せられました。


今回の「中国考古学入門セミナー」は、「第1回毎日エクステンション・プログラム」の一環としては開催されましたが、幸いにも受講者の皆さんからは大変暖かいご声援を賜ることができ、無事、終了したことをここに謹んでご報告申し上げます。

国内での「考古学入門セミナー」に引き続き、今夏8月21日から7泊8日の日程で、海外研修ツアー「北京大学・サマーキャンパス2009」 を開催いたします。目下、鋭意、受講者の募集を行っておりますので、中国五千年の歴史や考古学に関心のある方は是非、参加されますようお薦めいたします。




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